親御さんがアパートを経営している人は、アパートはそのまま相続できのか?と疑問に思っている人もいるでしょう。
結論からいうと、アパート経営は相続できます。ただし、アパート経営を相続する流れや、相続時にやるべきことを知っておく必要があるので、この記事ではアパート経営の相続にフォーカスを当て詳しく解説していきます。
目次
アパート経営を相続する流れ

まずは、アパート経営を相続する流れである以下を知りましょう。
- 法定相続人の確認
- アパートの処分方法の検討
- 相続登記
上記の一連の流れは司法書士に依頼することも多いですが、大まかな流れは把握しておくと良いでしょう。
法定相続人の確認
まずは、法定相続人の確認をします。というのも、隠し子がいるなどで「把握していない相続人」がいる可能性もあり、それが相続手続き後に分かるとトラブルの元だからです。
また、詳しくは後述しますが法定相続人の数によって基礎控除額も変わってきます。
アパートの処分方法の検討
アパートを相続する場合は、大きく分けて以下の処分方法があります。
- 現物のまま相続
- 売却して現金で相続
仮に、法定相続人が複数いる場合は、アパートを現物のまま相続すると共有になる可能性もあります。その場合は、賃貸したり売却したりするときには相続人全員の同意が必要なので、理解した上で相続しましょう。
もしくは、1人の相続人がアパートを相続し、ほかの相続人はアパートと同じだけの違う財産(現金など)を相続するという方法もあります。いずれにしろ、公平になるよう司法書士や税理士に相談した方が良いです。
相続登記
相続人と相続方法が決まれば相続登記に移ります。アパート経営の相続の場合は、そのアパート(建物+土地)の名義を、被相続人から相続人に変更するのが相続登記です。
そして、相続登記が完了すれば、アパート経営は相続人が承継したことになります。
アパート経営を相続する際の注意点

次に、アパート経営を相続するときの注意点である以下を知っておきましょう。
- 相続税の算出方法を知る
- 相続放棄という方法もある
- 相続したときにやるべきことを知る
相続税の算出方法を知る
まず、相続税の算出方法に関して、以下を知っておきましょう。
- 計算式と基礎控除基礎控除
- 税率と控除額
- 土地と建物の算出方法
実際に相続税を算出するときなどは税理士に依頼するのが一般的ですが、おおよその金額を知るために、相続時に上記を理解しておくことは重要です。
計算式と基礎控除基礎控除
相続税の計算式は、「(不動産の評価額-基礎控除)×税率ー控除額」となります。そして、基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」です。
仮に、被相続人(亡くなった人)に妻と子供2人がいれば、法定相続人は3人になります。そのため、基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人3人=4,800万円」です。
この場合、相続する財産の評価額4,800万円以下であれば、相続税はゼロになるということです。
税率と控除額
前項で算出した金額に応じて、以下のように税率と控除額が決まります。
相続する財産の評価額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
仮に、法定相続人が3人で相続するアパートの評価額が6,000万円の場合には、「(6,000万円-基礎控除4,800万円)×15%-50万円=130万円」が相続税額になります。
土地と建物の算出方法
仮に、アパートを相続した場合には、土地と建物評価額に対して相続税が発生し、土地と建物の評価額はそれぞれ以下で計算します。
- 土地:路線価(路線価がなければ倍率方式)
- 建物:固定資産税評価額
路線価は国税庁のサイトで確認でき、固定資産税評価額は毎年郵送されてくる固定資産税決定通知書で確認することが可能です。
相続放棄という方法もある
次に、相続放棄について以下を知っておきましょう。
- 相続放棄とは?
- 相続放棄のメリット
- 相続放棄のメリット
相続放棄とは?
そもそも、相続とは被相続人の遺産を相続人が承継することですが、その遺産は全てプラスの遺産ではありません。
つまり、被相続人の借金などのマイナスの遺産もあり、相続人はそのマイナスの遺産を承継するかどうかを決めることができ、承継しないのであれば相続放棄になります。
相続放棄は「相続を知った日(一般的には亡くなった日)」から3か月以内に管轄裁判所に申述書を提出するという流れです。また、一度相続放棄の手続きをすると取り消しできない点にも注意しましょう。
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットは、やはり「マイナスの資産を承継せずに済む」という点です。たとえば、親がアパート経営をしていて、そのアパートを相続するとします。
しかし、そのアパート経営は毎年赤字計上であり、残債もたっぷり残っている…しかもローン返済の延滞歴まであるという状況であれば、それは完全に負の遺産です。
このようなアパートを相続すれば得するどころか損してしまうので、相続放棄することでマイナスの遺産を受け入れずに済むというわけです。
相続放棄のデメリット
相続放棄のデメリットは、プラスの遺産も相続放棄することになる点です。たとえば、現金1,000万円と赤字のアパートがある場合、基本的に相続するか放棄するかの二択です。
つまり、アパートの相続を放棄するということは、現金1,000万円の相続も放棄するということになります。そのため、全財産の評価額を算出した後に、相続放棄するかどうかを決めた方が良いでしょう。
また、相続の方法としてマイナスとプラスを合算して相続する「限定承認」という特殊なやり方もあるので、相続放棄を検討するなら一度税理士に相談することをおすすめします。
相続したときにやるべきことを知る
アパート経営の状況について以下を把握することです。
- ローン残債の確認
- 団体信用生命保険の確認
- 賃借人への確認
ローン残債の確認
アパートを取得するときにはアパートローンを組んでいるケースが多く、借入期間は20年…場合によっては35年で組んでいる場合もあります。そのため、相続したアパートに残債があるケースは少なくないでしょう。
そのため、金融機関から届いているローン償還表などで、ローン残債や月々返済額を確認し、自分のキャッシュフロー的にどのくらいの負担になるか?を確認することが重要です。
団体信用生命保険の確認
団体信用生命保険(団信)とは、借入者が亡くなったり高度障害になったりしたときに、その時点の残債が補填される保険です。
住宅ローンの場合は団信への加入はほぼ必須ですが、アパートローンの場合は団信への加入が必須か任意かは金融機関によります。
仮に、団信に加入していれば被相続人が亡くなったときの手続きが必要なので、必ず相続時には確認しておきましょう。
賃借人への連絡
また、アパートの賃借人にオーナーが変わった旨を連絡しましょう。賃借人にとってオーナーが変更になってもさほど影響はありませんが、オーナーが最終的な連絡先にもなり得ます。
もちろん、管理会社を通してアパート経営をしているケースが多いので、実際は管理会社が窓口ですが、契約はオーナーの名義で行っているのでオーナーの変更時には賃借人への通知は義務です。
アパート経営の相続まとめ

まずは、アパートを相続するときに、土地と建物はどのように評価額を算出し、どのくらいの相続税になるかを理解しておきましょう。その後に、相続時の注意点に沿って相続するかどうかを判断するという流れです。
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