「不動産投資ファンド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
不動産投資ファンドは、個人投資家が行う不動産投資の中で「不動産投資小口化商品」と「REIT」に関係してきます。
個人投資家の中には、この2つの投資を検討している方もいると思うので、この記事ではそれぞれの仕組みやメリット・デメリットについて解説していきます。
目次
不動産投資ファンドとは?

そもそもファンドとは、複数の投資家から集めた資金を利用して投資を行い、その投資から得た収益を投資家へ還元する仕組みのことを指します。つまり、不動産投資ファンドは投資家から資金を集め不動産を保有・運用し、その運用益を投資家へ還元するという仕組みです。
不動産投資ファンドは大きく分けて「私募ファンド」と「公募ファンド」がありますが、私募ファンドは機関投資家などが対象になっているので、この記事では除きます。一方、公募ファンドは「広く一般に投資家を募集するファンド」なので、今回解説する2つの投資は公募ファンドに該当します。
不動産投資ファンド:不動産小口化商品とは?

まずは、不動産投資ファンドに関連する投資1つ目である「不動産小口化商品」について以下を解説します。
- 不動産小口化商品の仕組み
- 不動産小口化商品のメリット
- 不動産小口化商品のデメリット
不動産小口化商品の仕組み
不動産小口化商品とは、現物不動産を小口化したものです。たとえば、あるビルを保有・運用する場合に、2億円の資金が必要だとします。不動産小口化商品の場合は、1口100万円ほどまで分割し、投資家に個別に販売するという手法です。
仮に、10口(1000万円)取得したら、その投資家は5%(1000万円÷2億円)の持ち分割として所有権が登記されるという仕組みになります。言い換えると、1つの不動産を複数の投資家で共有して保有・運用するということです。
ただ、不動産小口化商品を販売している不動産会社が、そのまま保守・管理するので投資家の手間はありません。また、その不動産から得る運用益は持ち分割に応じて投資家に分配されます。
不動産小口化商品のメリット
不動産小口化商品のメリットは以下の点です。
- 現物不動産を少額から保有できる
- 相続税対策に有効
- 1人では保有できない不動産を保有できる
結論からいうと、不動産小口化商品は相続税対策として投資する人が多いです。
現物不動産を少額から保有できる
上述したように、不動産小口化商品は現物不動産の所有権が与えられるため、現物不動産を少額から保有できるということです。後述するREITをはじめ、不動産投資には色々な投資がありますが、「現物不動産投資以外に不動産の所有権を有すことができる投資は不動産小口化商品くらいでしょう。
相続税対策に有効
また、不動産の所有権を与えられる最大のメリットは、相続税対策に有効ということです。そもそも、相続税は「(相続税評価額-基礎控除)×税率-控除額」で計算されます。そして、不動産は現金で持っているときよりも、評価額が数割程度まで下がるのです。
たとえば、現金6,000万円を相続すると、相続税評価額はそのまま6,000万円です。一方、6,000万円で投資用不動産を購入すると、物件にもよりますが相続税評価額は1,000万円台まで下がることもあります。
後述するREITをはじめ、現物不動産以外の不動産投資は「その不動産の所有権」を持つことができないため、相続税の節税効果はありません。一方、不動産小口化商品は上記のように相続税の節税効果が大きいのです。
1人では保有できない不動産を保有できる
また、不動産小口化商品は商業ビルなども対象としており、億単位の商品が多いです。億単位の商品を個人で購入するのは難しいですが、小口化することでその不動産を保有できます。その点も、不動産小口化商品のメリットといえるでしょう。
不動産小口化商品のデメリット
不動産小口化商品のデメリットは以下の点です。
- 収益性は落ちる
- 商品が少ない
- 運用失敗リスクがある
収益性は落ちる
不動産小口化商品は、運用を不動産会社に任せるので、1人で現物不動産投資をするときよりも経費がかかります。かつ小口化していることで収益は分散されるため、1人で現物不動産投資をするときよりは収益性は落ちます。
商品が少ない
また、不動産小口化商品はメジャーな不動産投資ではなく、上述したように相続税対策が主な目的です。そのため、現物不動産投資などと比べると商品が少なく、選べる余地がない点もデメリットといえるでしょう。
運用失敗リスクがある
当然ながら、保有・運用している不動産投資が失敗することもあり、その場合は分配金が減額、もしくはゼロになる可能性もあります。
不動産投資ファンド:REITとは?

次に、不動産投資ファンドに関連する投資2つ目である「REIT」について以下を解説します。
- REITの仕組み
- REITのメリット
- REITのデメリット
REITの仕組み
REITの仕組みは以下の通りです。
- 投資法人(ファンド)がREIT(証券)を発行
- 投資家がREITを取得
- ファンドが不動産を保有・運用
- 運用益を投資家に分配金として還元
投資家は、株式のように証券会社を通じてREITを購入します。そして、そのREITの運用元であるファンドが不動産を運用しているので、その運用益の一部をREITの保有口数に応じて分配金としてもらうという仕組みです。また、REITは上場しているので株式と同じように売買することもできます。
REITのメリット
REITのメリットは以下の通りです。
- 利回りが高い
- 少額から投資可能
- 分散投資できる
- 流動性が高い
利回りが高い
REITの利回りは、不動産証券化協会によると4%前後です。この利回りは、たとえば東証一部上場の株式配当利回りよりも高いので、比較的利回りが高い点はメリットといえます。
少額から投資可能
REITの価格は日々変動しますが、2019年10月時点でいうと2万円台から取得することが可能です。この少額から投資可能という点は、不動産小口化商品や現物不動産投資との大きな違いといえるでしょう。
分散投資できる
ファンドは、投資家から集めたお金と金融機関からの借入で、複数の物件を保有します。つまり、REITを保有すると、自動的に分散投資できているというわけです。
流動性が高い
また、REITは上場しているので、証券会社がオープンしているときに時価であれば即決済できる点もメリットといえます。
REITのデメリット
一方、REITには以下のデメリットがあります。
- 所有権はない
- 価格変動が大きい
- 倒産・破綻リスクがある
所有権はない
現物不動産投資や不動産小口化商品と違い、REITには不動産の所有権がありません。そのため、相続税の節税などの恩恵が受けられない点はデメリットといえます。
価格変動が大きい
また、現物不動産投資でいう「家賃収入」よりは、REIT価格は変動が激しいです。たとえば、REIT価格は1年で3割減になることもありますが、同じことは家賃では起こりにくいでしょう。
倒産・破綻リスクがある
REITは運営元が投資「法人」なので、倒産・破綻するリスクはあります。その際は、ほかの投資法人に引き継がれる可能はありますが、REIT価格の暴落リスクなどがあるのは事実です。
不動産投資ファンドまとめ

このように、個人投資家が投資できる不動産投資ファンドは、不動産小口化商品とREITと思って良いでしょう。それぞれの仕組みやメリット・デメリットを理解し、現物不動産投資と比較してから投資するか判断することをおすすめします。