不動産投資は個人で行うケースと、法人化して行うケースがあります。一般的には個人で行うケースが多いですが、ある程度規模が大きくなってくると法人化した方が得なケースもあるでしょう。
そこでこの記事では、「不動産投資の法人化」にフォーカスを当て、不動産投資で法人化した方が得?個人と法人はどちらがいい?という点を解説していきます。
目次
不動産投資で法人化する仕組みと個人との違い

不動産投資で法人化する仕組みと個人との違いについては、以下を知っておきましょう。
- 法人化して収益を上げる仕組み
- 法人化と個人との違いは税金
- 法人化して節税する事例
結論からいうと、一定規模を超える不動産投資をするなら法人化を考えた方が良いですが、それ以外なら個人で不動産投資をしても問題ありません。
法人化の仕組み
そもそも、不動産投資で法人化するとは、法人(株式会社や合同会社)などを設立して、その法人が不動産を保有するということです。一方、個人の場合は法人ではなく、あくまで個人が不動産を保有します。
たとえば、Aさんが不動産投資するとして、Aさんが不動産を購入しAさん名義で登記するのが「個人で不動産投資する」ことになります。一方、AさんがZ社(株式会社)という法人をつくり、そのZ社の名義で不動産を保有することが「法人化して不動産投資する」ということです。
法人化する場合は、その法人の代表取締役になるケースが多いです。つまり、このケースでいうとZ社の代表取締役はAさんがなります。
法人化のメリット
法人化して不動産投資をするメリットは以下の点です。
- 税率が低いケースがある
- 家族を役員にできる
総じていうと、法人化することで節税効果があり、結果的に不動産投資から得る収益が上がる点が、法人化して不動産投資するメリットです。
税率が低いケースがある
法人化する1つ目のメリットは、個人のときよりも税率が低くなる点です。まず、個人の場合には不動産所得は給与所得などほかの所得と合算されます。その上で、以下の税率が適用されるという仕組みです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
一方、 法人税の税率 は規模などによって異なりますが、800万円までは19%、800万円超になると23.2%です。さらに、給与所得などと合算されないので、個人の所得税よりも低い税率になるケースが多いでしょう。
家族を役員にできる
2つ目のメリットは家族を役員にできるという点です。たとえば、Aさんの妻を法人の役員にして、不動産投資に関する業務を任せたとします。仮に、その法人が不動産投資で年300万円の利益を生んでいたとして、その全額300万円を妻への役員報酬にしたと仮定します。
その場合、もちろんAさんの所得は上がりませんし、妻がほかに仕事をしていなければ個人の所得として300万円に税率(10%)がかかるだけです。仮に、Aさんの年収が650万円で個人で不動産投資をしていたら、Aさんの所得は950万円になり、税率は33%になってしました。
そして、妻に支払う役員報酬は損金計上されるので、法人としての所得はゼロになります。このように、法人化することで家族を役員にすることで、不動産所得を自分以外の所得にでき、結果的に節税につながります。
法人化のデメリット
法人化して不動産投資するデメリットは以下の通りです。
- 法人設立に関する費用がかかる
- 税理士費用がかかる
法人設立に関する費用がかかる
法人化するということは、法人を設立するということです。そのため、たとえば株式会社であれば以下の費用がかかります。
- 定款の認証手数料:50,000円ほど
- 定款の謄本手数料:2,000円ほど
- 設立にかかる登録免許税:150,000円ほど
上記は資本金などによって異なるので、最低でも20万円前後はかかる…と認識しておくと良いでしょう。合同会社にすれば6万円程度ですので、合同会社でも問題ないです。ただし、いずれにしろ個人のときよりも費用がかかります。
税理士費用がかかる
法人化するということは、確定申告するときの書類が個人のときよりも複雑になります。そのため、一般的には税理士に依頼するケースが多いため、最低でも10万円ほどの費用がかかる点もデメリットといえます。
個人の場合でも税理士に確定申告を依頼するケースもありますが、法人化して不動産投資するよりも簡単なので、自分でやってしまう人も多いです。なお、税理士に支払う報酬は、税理士事務所や規模(保有する不動産の数など)によっても異なります。
法人化するタイミングと注意点
法人化するタイミングとしては以下が挙げられます。
- 安定して不動産所得を上げられる
- 税金が安価になる
- 注意点:途中から法人化すると費用がかかる
安定して不動産所得を上げられる
まずは、安定して不動産所得を上げていることが条件です。というのも、上述したように不動産投資で法人化するメリットは、家族を役員にして役員報酬にするという点がありました。
しかし、役員報酬は原則1年に1回しか変えられないため、不動産投資が安定しないと金額を設定しにくいのです。そのため、まずは不動産投資で安定して収益を得られる状態になっていることが条件といえます。
税金が安価になる
また、当然ながら個人で不動産投資するときよりも、税金が安価になっていることも条件です。ただし、上述したように個人の場合は給与所得などと合算されるので、人によって「不動産所得が○○円以上のときは法人化した方が良い」というラインは異なります。
そのため、不動産所得を安定して上げられている状態で、税理士に相談しながら法人化の判断はした方が良いです。税理士に相談することで、家族を役員にしたときの税金と一緒に検討することも可能です。
注意点:途中から法人化すると費用がかかる
注意点としては、途中から法人化すると以下の費用がかかります。
- 登記費用
- 不動産取得税
- 譲渡所得税
たとえば、Aさんがすでにアパート一棟を保有しており、途中から法人化するためにZ社を設立したとします。その際は、Aさんの保有しているアパートをZ社に譲渡(売却)するという流れになるのです。そのため、再度Z社に登記する費用がかかりますし、不動産を取得したことで不動産取得税もかかります。
さらに、AさんはZ社に「アパートを売却した」という扱いになるので、譲渡所得がプラスになったときは譲渡所得税もかかってきます。そのため、はじめから法人化するのではなく途中から法人化するなら、上記の費用も加味して法人化を検討する必要があるのです。
不動産投資の法人化まとめ

このように、法人化することで税金を安価にできるなどのメリットがありますが、設立費用やランニングコストがかかるというデメリットもあります。
また、家族を役員にしたり、法人としての確定申告をしたりと、考えることや手間が増えるのも事実です。特に、税金に関しては複雑になるため、法人化する判断は必ず税理士に相談してからにしましょう。