不動産売却時は「譲渡所得税」に注意すべきですが、実はもう1つ「贈与税」にも注意が必要です。贈与税は、場合によっては譲渡所得税よりも高税率になるため、贈与に該当するかどうかは非常に重要になります。そこでこの記事では、「不動産売却の贈与税」にフォーカスを当て、失敗しないためにはどうすれば良いか?という点について詳しく解説していきます。
目次
不動産売却の贈与税の概要

まずは、不動産売却における贈与税の概要について以下を解説します。
- 贈与税とは?
- 贈与税の計算式
- 贈与税の税率と控除額
贈与税とは?
そもそも、贈与税とはその名の通り「財産などを贈与したとき」に発生する税金です。贈与税を支払うのは財産などを「受け取る側」であり、財産などを「贈与する側」には発生しません。贈与税がないと、相続前に財産を子供などに贈与することで、相続税を逃れることができてしまうのです。だからこそ、贈与税というものが存在します。
贈与税の計算式
贈与税の計算式は、「1年間の贈与額-基礎控除110万円)×税率-控除額」となります。税率や控除額は後述しますが、贈与税は1年単位の「贈与」について発生し、毎年110万円基礎控除される点は認識しておきましょう。逆にいうと、毎年110万円以下の贈与であれば、贈与税はかからないということです。
贈与税の税率と控除額
次に、贈与税の税率と控除額を解説していきます。贈与税の税率と控除額は、贈与する側が20歳以上か否か、そして直系尊属(親や祖父母)からの贈与か否かによって税率は変わってきます。
20歳以上で直系尊属※から贈与を受けた場合
まずは、20歳以上で直系尊属※から贈与を受けた場合の税率、および控除額は以下の通りです。
控除後の贈与額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
仮に、評価額2,800万円の不動産を贈与されたら、「(2,800万円-110万円)×45%-265万円=945.5万円」が贈与税です。
前項以外の贈与
控除後の贈与額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
前項と同じく、評価額2,800万円の不動産を贈与されたら、「(2,800万円-110万円)×50%-250万円=1,095万円」が贈与税なので、前項よりも149.5万円高くなります。
不動産売却で贈与税に関しての注意すべき取引

不動産売却で贈与税に関して注意すべき取引は、以下のような取引です。
- 親族間取引
- 関係会社間の取引
総じていうと、税務署に「不正な価格で取引しているのではないか?」と思われる取引は注意が必要です。
親族間取引
まずは、親族間取引するときには注意が必要です。親族間取引とは、親子間や兄弟間などのように親族間で不動産を売買することです。なぜ親族間取引に注意すべきかというと、相続税逃れのために不正な取引をしているのでは?と疑われる可能性があるからです。
要は、相続する前に「相場より安い金額で売却」することによって、相続税よりも安価な税金で済まそうとしているのでは?と思われる可能性があるということです。他人同士の売買ではこのようなことはないですが、家族間であればあり得るため疑われやすくなります。
関係会社間の取引
親族間取引より事例は少ないでしょうが、関係会社間の取引も疑われやすいです。というのも、たとえば親が法人Aを設立して、子供が法人Bを設立したとします。そして、法人Aの名義でマンションを所有しており、それを法人Bに譲渡したとします。
このとき、相場価格では5,000万円のところを2,000万円で譲渡したとすれば、法人Bは格安でマンションを取得することが可能です。また、法人Aも譲渡所得(≒売却益)がないため、法人税もかかりません。このように、関係会社間でも親族間取引のような不正ができてしまうので、税務署に疑われやすいのです。
不動産売却で贈与税がかからないようにする方法

では、さいごに不動産売却で贈与税がかからないようにする方法である以下を解説していきます。
- 適正な価格で取引する
- 贈与税の配偶者特例
- 住宅取得等資金の贈与の特例
適正な価格で取引する
まずは、何といっても適正な価格で取引することです。適正価格というのは、概ね「相場価格」と同じ金額であり、そのためには不動産会社の査定金額が参考になります。不動産会社に査定依頼をすると、周辺の成約事例から「査定価格(≒相場価格)」を算出してくれます。
たとえば、3社に査定依頼をして、3社から算出された金額の平均金額で売却すれば、贈与と見なされるリスクは極めて小さいでしょう。また、不動産会社ではなく、自分自身でも周辺の成約事例を調べられるサイトがあるので、参考にしてみてください。
贈与税の配偶者特例
また、贈与税は配偶者に対しての贈与であれば、贈与税の配偶者特例を利用できます。内容としては、居住用不動産や居住用不動産の取得資金であれば、最高2,000万円であれば控除(マイナス)することができるのです。つまり、2,000万円までの贈与であれば非課税になります。
また、配偶者特例は基礎控除とは別なので、基礎控除の110万円と合わせると2,110万円まで控除があるということです。ただ、この特例を利用するには以下の条件を満たしている必要があります。
- 夫婦の婚姻期間が20年以上
- 贈与を受けた翌年3月15日までに贈与を受けた不動産の居住する
- 上記に今後も住み続ける予定である
この特例を利用することで、贈与税を回避できる可能性があります。
住宅取得等資金の贈与の特例
次に、住宅取得等資金の贈与の特例を利用する方法です。この特例は、父母や祖父母などの直系尊属から贈与され場合、それが住宅の新築や取得のための費用であれば、以下のように非課税枠があるという特例です。
- 省エネ住宅:1,200万円
- 上記以外:700万円
この特例は不動産売却に関する特例ではありませんが、もし不動産を売却して新たに不動産を購入するとき…つまり不動産の買い替え時には利用できる特例なので覚えておきましょう。
ただ、贈与される側に「贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上である」や「贈与を受けた年の合計所得が2,000万円以下である」などの条件があるので、上記のサイトで確認する必要があります。
不動産売却の贈与税まとめ

不動産売却時に贈与税が発生してしまうと、最大55%の高税率になります。そのため、まずは贈与税に該当しないために、適正な価格で売却することが重要です。そのためには、イエウールで複数社へ査定依頼することをおすすめします。イエウールなら、数分の入力作業で複数の不動産会社に一括査定できます。
つまり、個別に査定依頼する手間は不要であり、面倒な手続きもありません。また、イエウールは参画企業数が1,600社以上と、一括査定サイトの中でもトップクラスに多いため、相性の良い不動産会社と出会いやすいでしょう。