不動産投資で物件を選定する際は、その物件の「利回り」を確認します。というのも、利回りはその物件の収益性を測る上で分かりやすい指標だからです。しかし、利回りはそう単純なものではなく、種類も複数ありますし注意点もあります。
また、最低ラインはどのくらいか?と思っている人も多いでしょう。そこでこの記事では、そもそも利回りとは?最低ラインはどのように考えるべきか?注意点はないか?など詳しく解説していきます。
目次
不動産投資の利回りとは?計算方法

不動産投資の利回りには以下3種類あります。
- 表面利回り:年間家賃収入÷物件価格
- 実質利回り:(年間家賃収入-経費)÷物件価格
- 返済後利回り:(年間家賃収入-経費-ローン返済)÷物件価格
利回りごとの役割
利回りごとの役割イメージは以下の通りです。
- 表面利回り:一旦大まかに物件を絞る
- 実質利回り:さらに物件を絞り込む
- 返済後利回り:購入の判断をするときの最終ジャッジに使う
もちろん、全物件で返済後利回りを算出した方が、精度の高い利回りになります。しかし、全ての物件で返済後利回りを算出するのは時間がかかり現実的ではないです。そのため、表面利回りで物件を絞って、さらに実質利回りで物件を絞り込むというイメージになるのです。
想定家賃かどうかに注意
また、上述したように利回りの計算式には「年間家賃収入」という項目があります。この家賃収入は空室であれば想定であり、稼働中であれば現在の家賃で算出している点には注意しましょう。というのも、空室時の想定はあくまで「想定」であって、実際はもっと家賃を下げないと賃付けできないかもしれないからです。
不動産投資の利回りは10%が最低ライン?

前項で、利回りの仕組みやそれぞれの役割が分かったと思います。次に、不動産投資の利回りの最低ラインの解説をしますが、はじめにいっておくと利回りの最低ラインはケースバイケースなので一概にはいえません。ただ、一般的に利回りの最低ラインは10%程度といわれており、その点について以下を解説していきます。
- 利回りが10%といわれている理由
- 物件種類ごとの利回り推移
- 高利回り物件のリスク
利回りが10%といわれている理由
まず、利回りの最低ラインが10%といわれているのでは、表面利回りで10%ないと返済後利回りで利益が出にくいからです。返済後利回りでマイナスになれば、当然ながら不動産投資による収益がマイナスということなので、その状態は避けなければいけません。
この章では、今一度それぞれの利回りの計算式を思い出してから、利回り10%が最低ラインといわれている理由を詳しく解説します。
- 表面利回り:年間家賃収入÷物件価格
- 実質利回り:(年間家賃収入-経費)÷物件価格
- 返済後利回り:(年間家賃収入-経費-ローン返済)÷物件価格
表面利回りから実質利回りの計算
表面利回りと実質利回りの違いは「経費」を加味するかどうかであり、経費とは具体的には以下の項目になります。
- 固定資産税や都市計画税
- 退去時の原状回復費用
- 管理委託手数料
- 火災保険料や地震保険料
- 管理費・修繕積立金(区分所有)
- 共用部の修繕費用(一棟投資)
- 税理士への報酬(確定申告を依頼する場合)
- その他経費(物件運営のための交通費など)
物件によって異なりますが、上記のような経費を加味すると表面利回りが10%あっても、実質利回りで5~7%程度まで下落します。
返済後利回り
次に、実質利回りから返済後利回りを計算するときは、経費に「ローン返済」が加わります。たとえば、借入期間25年でローンを組むと、金利と借入額によって以下のような月々返済額になります。
借入額/金利 | 1.50% | 2% | 2.50% | 3% |
1,000万円 | ¥39,853 | ¥42,385 | ¥44,861 | ¥47,421 |
1,500万円 | ¥59,780 | ¥63,578 | ¥67,292 | ¥71,132 |
2,000万円 | ¥79,706 | ¥84,770 | ¥89,723 | ¥94,842 |
3,000万円 | ¥119,559 | ¥127,156 | ¥134,583 | ¥142,263 |
5,000万円 | ¥199,265 | ¥211,926 | ¥224,306 | ¥237,105 |
要は、ローン返済額は高額になるため、この金額が加味されると利回りも落ちてしまうということです。ケースバイケースではありますが、表面利回りが10%で実質利回りが6%になれば、返済後利回りでは2~3%程度まで下落するでしょう。
とはいえ、返済後利回りで2~3%出ていれば合格ラインといえるので、言い換えると表面利回り10%を確保しておけば、全ての支出を加味してもある程度利益が出るので「利回りは最低10%」といわれているのです。
利回りによる収益の比較
前項までで、表面利回りが10%のときに、実質利回り・返済後利回りがどうなるかの目安が分かったと思います。次に、その利回りによる収益目安を比較すると以下の通りです。なお、取得した物件は3,000万円と想定しています。
- 表面利回り:3,000万円×10%=年間300万円
- 実質利回り:3,000万円×6%=年間180万円
- 返済後利回り:3,000万円×3%=年間90万円
このように、表面利回りと実質利回りだと収益に差が出て、返済後利回りは「手取り収益」とほぼイコールになるので、返済後利回りに注目する必要があるのです。要は、利回りの最低ラインは目安として10%と思っておくものの、重要なのはきちんと返済後利回りまで算出して収益性を測ることです。
物件種類ごとの利回り推移
投資物件のポータルサイトである建美家の年間レポートを確認すると、2018年の物件種類ごとの利回り(表面)は平均で以下の通りです。
- 区分マンション:7.74%
- 一棟アパート:8.85%
- 一棟マンション:8.05%
上記は全国平均であり、地域ごとに利回りを見てみると10%を超えている物件は地方に多く、首都圏の利回りは低いです。しかし、首都圏の場合は利回りは低くても需要が高いので、安定性はあるといえます。
高利回り物件のリスク
前項のように、利回りはエリアによっても異なり、首都圏の場合は利回り10%を切っても成立します。しかし、それは需要が高いからであって、全てのエリアで同じことがいえるわけではありません。そして、投資家の中には高利回り物件を希望する人も多いですが、高利回り物件には以下のようなリスクがある点は覚えておきましょう。
- 稼働率が低い物件が多い
- 修繕が必要な物件が多い
要は、高利回りということは物件価格が低いということであり、それには何かしらのデメリットがあるということです。
稼働率が低い物件が多い
価格が安いということは、空室が多い物件である可能性があります。つまり、表記されている利回りは満室稼働することを前提とした利回りであり、実際にその利回りになるかは分かりません。そのため、集客や賃付けの施策を練る必要があるため、難易度が高い不動産投資といえるのです。
修繕が必要な物件が多い
また、価格が低い物件は築古物件が多いため、購入した瞬間に「修繕」が必要な場合もあります。言い換えると、修繕することを前提に購入する必要があるので、こちらも難易度が高いのです。というのも、どこを修繕するか?いくらかかるのか?などは素人には分からないので、想定よりも修繕費用が高くなれば利回りは一気に落ちます。
このように、高利回り物件を取得すると収益性は上がりますが、それは運用に成功しているときの話であり、リスクが高いという点は認識しておきましょう。
不動産投資の利回りまとめ

まずは、不動産投資の利回りには3種類あり、それぞれ役割が異なるという点を認識しておきましょう。その上で、最低利回りを一旦10%に置くものの、大事なのは返済後利回りであり、高利回りの物件もリスクがある点を理解することが重要です。